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【アヴィノフェスタで知ってみよう☆】

「シチリア・サルデーニャ ~征服され続けた歴史の中に育まれる強さと美しさ~シチリア編」

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太宰治の「走れメロス」は、ギリシャ神話を下敷きにした短編小説。舞台はシチリア島東南部のシラクーサだったというのはご存知ですか?
また古代ギリシャの数学者であり史上最大級の科学者アルキメデス。生まれも育ちも実はシラクーサ。
私達がギリシャだと思い込んでいた事柄は実はシチリアでの出来事。
シチリアの古い歴史をひも解けば答えが見つかります。

シチリアの北に広がる海を「ティレニア海」と言います。これはギリシャ語起源で「エトルリア人の海」という意味。エトルリア人とは今のトスカーナ人のご先祖様。
シチリア東部に広がりギリシャへと広がる海は「イオニア海」紀元前2000年ごろからバルカン半島西部より現在のギリシャを経て、現在のトルコである小アジアに移住した「イオニア人の海」という意味です。アテネを都市国家として築き上げたのもイオニア人で、かつてのギリシャ人をはじめが多くの英雄や実力者たちが各地に勢力を張り、本国を凌ぐほどの隆盛を誇ったのが古代シチリアを始めとする南イタリア。つまりこれが古代7,8世紀をピークとする南イタリアの大繁栄「大ギリシャ時代」。ペロポネソス戦争でアテネに援軍を要請されるほどの国力を持ったのがシチリア島のシラクーサだったのです。

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その歴史を踏まえれば、古代ギリシャがベースの「走れメロス」の舞台が何故にシチリアのシラクーサ。シラクーサ出身のアルキメデスはギリシャ人。という問いには、当時のシチリアが古代ギリシャの一部であったと知ることでガッテンが行くのです。

古代ギリシャが葡萄酒文化にも
大きな影響を与えた事は言うまでもありません。
現在でもワイン雑誌登場するワイン用後「エノ」。
例えば、エノテーカ(ワイン屋)、エノロジー(醸造学)、エノロゴ(醸造学者)など。この起源はギリシャ語の「オイノ」=「ワイン」ですし、南イタリアに未だ広く分布する古代ギリシャの植樹法「アルベレッロ」は、現代ワイン界でも「量よりも質」を重視するワイナリーに採用される栽培法です。中部、北部イタリアに広がる、質量の「効率」を重視したフランス風の仕立てとは対極的な剪定法と言えます。
また、数ある南イタリアの固有ブドウ品種の幾つかはこの古代ギリシャ人がもたらした葡萄と考えられています。白葡萄品種「グレコ」や「グレカニコ」は「ギリシャ人」という意味を持ち、イタリア全土で様々な亜種となったマルヴァジア種、赤ならアリアニコ(ヘレニズム=ギリシャの葡萄という意味)。

我々イタリアワインファンはシラクーサやアグリジェントのギリシャ遺跡を見て驚嘆するのと同じように、シチリアのブドウ畑の深い歴史に感動できるのです!以上はシチリアの歴史を特徴づける東部の話。

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ではパレルモ、トラーパニ、マルサーラなどのシチリア西部を特徴付ける歴史の刻印はなんでしょう?それは間違いなくアラブ世界でしょう。
西ローマ帝国終焉後の蛮族侵入の後にシチリアに君臨したのがアラブ人。イタリアにおいては歴史上唯一アラブ人の統治を許した地であり、だからこそシチリアにシチリアたる風格、他のイタリアには存在しない圧倒的な魅力をもたらしたのは紛れもなくアラブ文化といえます。
9世紀から11世紀にパレルモを拠点としてシチリアに君臨しました。現在も食材の中に垣間見る事の出来る言葉、メランザーネ(なす)、アランチャ(オレンジ)、ズッケロ(砂糖)、ザッフェラーノ(サフラン)、リーゾ(米)など、すべてこの時代にシチリアにやってきたアラブ語起源の食材です。アラブ人の多くの人が進行するイスラム教徒はワインを飲まず、葡萄をレーズンにして食したことの食文化やワイン文化に与えた影響も計り知れませんし、何よりも農地に「灌漑」をもたらせたのもアラブ人。中世においてはキリスト教文明よりもはるかに先進的だったのがアラブ文化でした。

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イタリアの歴史文学の著書塩野七生さんが新著で描いた北方ヨーロッパ民族=ノルマン系王族の血を引く神聖ローマ皇帝を題材として「フリードリッヒ2世」では、パレルモを拠点にアラブ人、ギリシャ人、現地シチリア人、そしてユダヤ人を「政治的寛容」の力で治め、中世から現代に至るまでの歴史を顧み政治とやってのけたのは「奇跡」としか言いようのない事(パレルモ王室礼拝堂は圧巻の一言!)。
青い目をした北ヨーロッパ人がシチリアを統治したなど信じ難いものがありますが、実際シチリアに行けば、背が低く、黒髪ながら青い目をした人を難なく見つけることになり、偉大なるシチリアの征服の歴史を現代シチリア人のフィジカルに感じることができるのです。

ギリシャや、アラブだけはなく、フェニキア、ローマ、ヴァンダル、東ゴート、ビザンチン、ノルマン、フランス、スペイン、ピエモンテ、オーストリア、スペイン、そしてイタリア。シチリアの壮大な「征服の歴史」における文化、人々の精神性の独自性は「イタリアにイタリア人はいない」とさえ言われる、地方主義のこの国の中でも一際輝きを放っています。

ラ・ヴィネリア・ブラヴーラ ソムリエ 高岡洋文 (
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by amiciviniitaliani | 2014-09-27 18:28 | アヴィフェスvol.5島ワイン
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AVIによるイタリアワインの啓蒙と普及の為のブログ


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